汲み取り式トイレ(ぼっとん便所)戸建は投資してよいか?直せる?

汲み取り式(ぼっとん)トイレで、クッソ安い物件があったら投資対象にするか迷いませんか?

実需(自分で住む用途)ではまず買わないので、安く売り出されている物件はたくさんあります。

しかし、汲み取り式トイレの物件を購入したところで、将来入居者が果たして付くのか否かを迷ってしまいます

また汲み取り式から浄化槽や下水道に接続するリフォーム工事を行う場合、どれだけの工事費用が必要となるか?

見当がつきません。ここではその様な疑問を解決するべく、汲み取り式・浄化槽・下水道について詳しく解説します。

条件によっては、汲み取り式を改修することにより高利回り物件に変身させることも可能となります。

目次

汲み取り式トイレ(ぼっとん便所)物件は入居者が付く?

東京都内では、多摩や奥多摩、大阪府内でも河内や泉州・泉南になりますと、汲み取り式トイレの物件はまだ数多く残っています。

下水の内訳や汲み取り式トイレ、入居者が付くか否かについて解説します。

 

汲み取り式トイレ

汲み取り式トイレは、建物から出る汚水を便槽といわれるタンクにいったん貯める形式です。

便槽には浄化処理する機能が無いので、バキュームカーにて定期的(通常は毎月)に汚水を汲み取り、下水処理場へ搬送して浄化処理を行います。

汲み取り式トイレには、「ぼっとん便所」といわれるタイプと「簡易水洗」といわれるタイプの2種類があります。

「ぼっとん便所」は昔からあり、トイレから汚水がそのまま便槽に流れるタイプです。

ふたのある場合もありますが、汚水の臭気が漂います。

「簡易水洗」は見た目は通常の水洗トイレと変わりません。

詳細は次節にて説明します。

汲み取り式トイレのメリット・デメリット

汲み取り式トイレのメリット・デメリットを下表にまとめます。

メリット デメリット
・水道代が不要となる。

・災害時でも使用可能である。

・臭気が便所だけでなく部屋の中まで漂う。

・人や物が便槽に落下する危険性がある。

・定期的にバキュームカーによる汚物の汲み取りが必要となり、手間と費用がかかる。

・水害の場合、便槽内に河川水や海水が侵入し、汚物が逆流する可能性がある。

 

上表を見ますと、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に多いため、入居を敬遠される傾向にあります。

「ぼっとん便所」は入居者が付くか?

若い世代には「ぼっとん便所」を知らない人たちの方が多く、実物を見ると驚かれると思います。

とにかく臭気が漂うため、よほど地方でもない限り、賃貸物件としては入居者が付きません。

地方には下水道が整備されていない地域もまだ多く存在し、特に一戸建て住宅にはこのタイプが多く残っています。

でも、周りがぼっとん便所の家だからと言って、自分がぼっとん便所に住みたいとはなりませんよね。

特に、賃貸物件を探している人は若い人が多いので「ぼっとん便所」は敬遠されがちになります。

「ぼっとん便所」物件が売り出されている場合、高利回りが期待できるなどの好条件が見込める物件であっても、先ずは敬遠した方が無難と言えます。

もしくは水洗トイレにリフォーム工事することを前提として取り組むのが賢明となります。

簡易水洗にすればOK?

簡易水洗について、リフォーム代やDIY、維持管理費用の解説をします。

簡易水栓とは

見た目は通常の水洗トイレと変わりませんが、汲み取り式のトイレ部分を水洗にしたものです。

トイレと便槽との接続部分を排水トラップの封水により便槽からの臭気を塞ぐため、便所や部屋家で臭気が漂うことが無くなります。

この簡易水栓は一番簡単なリフォームでコストパフォーマンスが良いです。

簡易水栓にすれば普通に水洗便所にしか見えないので、入居付けも可能になりますし。

簡易水洗のリフォーム代

ぼっとん便所から簡易水洗へのリフォーム費用は、ぼっとん便所の近くにまで水道管が引かれていることやコンセントが近くにあることによっても違ってきます。

無ければ新たに水道管や電気配線を施さなけれななりません。

近くに水道管やコンセントがある前提で、便器のグレードにより費用は違ってきますが、約30万円前後になります。工事の内訳や参考価格(目安)を下表にまとめます。

工事項目など 参考価格(目安)
簡易水洗用便器費用 100,000円~200,000円
汲み取り式便器撤去費用 20,000円~30,000円
簡易水洗用便器設置費用 30,000円~50,000円
配管費用 30,000円~50,000円
電気工事費用 30,000円~50,000円
内装工事費用 30,000円~50,000円
合  計 240,000円~430,000円

Δ簡易水洗のリフォーム代の参考価格(目安)

 

また工事期間は約1週間前後を要します。工事作業工程としては下表の通りです。

 

順序 工事内容
ぼっとん便所の便器を解体する
ぼっとん便所の穴を遮蔽する
遮蔽した穴に排水管を設置する
簡易水洗用便器と排水管を接続し、設置する
水道管と接続し、電気配線を施す
便所の内装工事を行う

Δ簡易水洗工事の作業工程

簡易水洗化することにより、便器と便槽との間にできる排水トラップにより封水ができます。封水により、便槽に溜まっている汚水の臭気が逆流することを防ぎます。

DIY可能?費用は?

現在はYOUTUBEなどの動画でDIYの様子を紹介するWEBサイトが多く見られます。

その動画を参考にして、工事を見よう見まねで行い、DIYにチャレンジする人たちが数多くいます。

全てを自身で工事を行えば、便器費用と建材費用で済みますが、自身で行うことが困難な箇所だけを業者に依頼しても安くつきます。

仕上がりはともかく、どこまでの範囲を自身で工事を行うかによって費用は異なります。

簡易水洗の維持管理費用

東京都八王子市が公表している資料によりますと、し尿収集手数料・浄化槽の汚泥処理手数料などは下表により規定されています。

 

種  類 手 数 料
一般住宅

し尿収集手数料

1便槽1回につき、4,000円

(貸家やアパート等にお住まいの方は申請により2,000円)

一般住宅

浄化槽汚泥等処理手数料

1,000リットルにつき、4,000円

(清掃費用は別途かかります)

雑排水 1,600リットルにつき、4,000円

Δし尿収集・浄化槽汚泥・雑排水の手数料(出所:東京都八王子市)※2

 

5人家族の場合、上表より1か月に約500リットル汚泥が発生します。八王子市の場合には、1回につき4,000円の手数料が必要となります。

したがって5人家族の場合、簡易水洗の1か月当たりの維持管理費用は4,000円/月となります。

自治体などの公共機関が収集する場合には手数料は安くなる傾向にありますが、自治体により価格差はあります。民間企業が収集する場合には、高くなりますので確認が必要です。

簡易水栓による維持費増加

水洗により水を使用するため、ぼっとん便所と比較して便槽に貯まる汚水の量が早く増えるため、汲み取り頻度が増加します。

ある民間企業の調査資料によりますと、大人一人当たりの平均排泄量は1,330cc/日です。

簡易水洗にすると、これに洗浄水量1,700cc/日が加算され、3,030cc/日となります。

よって、住宅に居住する家族数により、便槽必要容量が異なります。

 

汲み取り式トイレ ぼっとん便所:排泄量(平均)

簡易水洗:排泄量+洗浄水量(平均)

便槽必要容量
1日 1か月 1か月
ぼっとん便所 1,330cc/日 42L/月 50L/月
簡易水洗 3,030cc/日 94L/月 100L/月

*1 排水トラップ:排水設備の配管の途中に設置されます。下水道の悪臭や硫化水素などのガスを遮断し、家の中へ侵入するのを防ぐ器具や装置となります。

浄化槽にする

次に簡易水栓よりもう少し本格的な直し方として、浄化槽にリフォームする方法を解説します。

関連記事:浄化槽物件は戸建投資の対象としてどうか?維持費の利回りへの影響を考える

浄化槽とは

浄化槽は、主に建物敷地内の駐車場などの地中に埋められ、建物などから出る汚水・雑排水を浄化処理し、前面道路の下水管などに排水します。

汚水・雑排水を微生物により分解しながら浄化処理を施すため、定期的な点検・清掃が法律により定められています。

また、微生物の活動を促進するために、空気を送るブロアーという機械を浄化槽の近くに設置する必要があります。

地方ですと、排水先が水利組合管轄の水路へ放流する場合も多く、浄化槽設置する際に水利組合への放流負担金が必要になることもあります。

また町内会・自治会などで水路清掃が年数回行われることもあります。

浄化槽の種類

浄化槽は主に、合併浄化槽と単独浄化槽の2種類があります。

合併浄化槽 建物から出る汚水・雑排水をまとめて浄化処理できる浄化槽です。
単独浄化槽 建物から出る汚水だけを浄化処理できる浄化槽です。雑排水は処理せず、そのまま排水路や河川に排水します。

Δ浄化槽の種類

新たに設置できる浄化槽は、合併浄化槽だけです。平成13年4月より、単独浄化槽は設置できなくなりました。

(※3)また浄化槽を設置している建物でも、建物敷地の前面道路などに下水道が整備されている地域内では、下水道に変更する義務が生じます。

浄化槽にできる条件は?

下水道が整備されていない地域や下水道に接続工事を行っていない地域では、浄化槽を設置する必要があります。

しかし敷地内に浄化槽を設置するスペースの不足や敷地が高台にあるなど、物理的に運搬できない条件となる立地もあります。

また浄化槽の排出先が遠方にあり、排出管設置の占用許可や長距離による経済的負担などの理由により、設置できない場合もあります。その場合には、リフォームを断念するか、簡易水洗にすることとなります。

浄化槽を設置する場合、浄化槽法により規定されています。関係書類の届け出や保守点検、清掃などの維持管理が細部に亘り規定されています。

詳細は各自治体に確認することが必要です。

自治体の指定業者に工事依頼すると、工事価格が安くなることもあります。

しかし、自治体によっては排水許可濃度が異なります。高い基準の排水濃度であれば、高価な浄化槽が必要になります。

浄化槽導入の費用は?

汲み取り式から浄化槽設置による水洗トイレへのリフォーム工事は、大掛かりな工事や自治体への手続きが必要となります。

工期は諸条件により約2か月を要することもあります。

合併浄化槽を敷地内の地中に埋めるためには、先ず既存の便槽を掘り起こして解体・撤去する工事が必要になります。

一般的な5人槽を設置するだけの場合には、便器や浄化槽のグレードにより違ってきますが、約100万円前後の工事費用が必要となります。

しかし、汲み取り式の便槽の解体・撤去工事が伴いますと、約130万円前後の工事費用が必要となります。工事の内訳や参考価格(目安)を下表にまとめます。

工事項目など 参考価格(目安)
水洗用便器費用 100,000円~300,000円
汲み取り式便器撤去費用 20,000円~30,000円
便槽解体・撤去費用 200,000円~300,000円
浄化槽設置費用 500,000円~800,000円
水洗用便器設置費用 30,000円~50,000円
配管費用 50,000円~100,000円
電気工事費用 30,000円~50,000円
内装工事費用 30,000円~50,000円
合   計 960,000円~1,680,000円

作業工程としては下表の通りです。

 

順序 工事内容
汲み取り式便器を解体する
便槽を掘削して解体・撤去する
浄化槽を設置する
浄化槽の排水管と敷地前面道路の下水管などと接続する
水洗用便器と浄化槽への排水管を接続し、設置する
水道管を接続し、電気配線を施す
便所の内装工事を行う

Δ浄化槽設置工事の作業工程

 

浄化槽の維持管理費用

浄化槽を導入する場合、一般的には業者と維持管理契約を行います。

通常はモーターの調整・点検や消毒剤の補充などの定期点検を年2~3回、汲み取りが年1回行われます。

環境省の「浄化槽サイト」によりますと、浄化槽の維持管理費用には清掃費・保守点検費・法定検査費やブロアの電気代が必要になります。

5人家族の場合、通常型の浄化槽(処理水のBODが20mg/L以下:5人槽)を使用した際の維持管理費用を下表にまとめます。

浄化槽維持管理費の内訳 費用(年間)
清 掃 費 25,000円
保守点検費 18,000円
法定検査費 5,000円
電 気 代 11,000円
合   計 59,000円

Δ浄化槽の年間維持管理費(出所:環境省)※4

年間の浄化槽維持管理費は59,000円/年となります。したがって、5人家族の場合の1か月当たりの浄化槽維持管理費は、4,917円/月となります。

下水道にはできる?

下水道について、条件や導入費用、維持管理費用の解説をします。

下水道とは

下水道は、建物などから出る汚水・雑排水を道路下などに埋められた公共下水管を通して下水処理場に送水され、浄化処理を施されて河川や海などに排水するシステムです。

下水道は自治体が維持管理を行うため、建物所有者は下水道と接続させるだけで利用することができます。

自治体によっては水洗化を推奨しているため、下水道に接続する工事費用に対して補助金を交付する場合もあります。

その際、下水道接続工事前に補助金申請する必要がありますので、事前に自治体への確認が必要となります。

下水道にできる条件は?

建物敷地の前面道路に下水管が埋設されていることが条件となります。

また埋設されていても容量の都合により接続許可が下りない場合もありますので、自治体への確認が必要となります。

下水道導入の費用は?

下水道の場合、浄化槽より安くなる傾向にあります。

敷地や建物条件、水洗用便器のグレードにもよりますが、50万円~80万円は必要となります。

工事の内訳や参考価格を下表にまとめます。

 

工事項目など 参考価格(目安)
水洗用便器費用 100,000円~300,000円
汲み取り式便器撤去費用 20,000円~30,000円
便槽撤去・解体費用 200,000円~300,000円
下水道接続・配管費用 100,000円~200,000円
水洗用便器設置費用 30,000円~50,000円
電気工事費用 30,000円~50,000円
内装工事費用 30,000円~50,000円
合   計 510,000円~800,000万円

Δ下水道工事費用の参考価格(目安)

 

作業工程としては、下表の通りです。

 

順序 工事内容
汲み取り式便器を解体する
便槽を掘削して解体・撤去する
便槽撤去跡の埋戻しを行う
水洗用便器と敷地前面道路の下水管との接続・配管工事を行う
水道管を接続し、電気配線を施す
便所の内装工事を行う

Δ下水道工事の作業工程

下水道の維持管理費用

東京都水道局の資料によりますと、5人家族の水道使用量は28.5㎥/月です。2か月で約57㎥使用することになります。

世帯人員 使用水量 世帯人員 使用水量
1人 8.2㎥ 4人 24.3㎥
2人 15.9㎥ 5人 28.5㎥
3人 20.4㎥ 6人以上 33.9㎥

Δ世帯人員別の1か月当たりの平均使用水量

(東京都水道局 平成28年度生活用水実態調査)※5

住宅の水道管の呼び径が20mmとします。東京都水道局の「水道料金・下水道料金早見表【2か月用】(23区)」(※4)によりますと、2か月で57㎥の水道を使用した場合の下水道料金は6,574円となります。

したがって、5人家族の場合の1か月当たりの下水道料金は、3,287円/月となります。

まとめ

以上、汲み取り式トイレ(ぼっとん便所、簡易水洗)、浄化槽、下水道について解説しました。

ここでぼっとん便所を簡易水洗や浄化槽、下水道にリフォーム工事を行う場合の解説を上記で行いましたが、その工事費をまとめますと下表の通りです。

まとめ:ぼっとん便所からのリフォーム費用

ぼっとん便所からの

各種リフォーム工事

参考価格(目安) 平均価格
簡易水洗にした場合 240,000円~430,000円 335,000円
浄化槽を設置した場合 960,000円~1,680,000円 1,320,000円
下水道に接続した場合 510,000円~800,000円 655,000円

Δぼっとん便所からの各種リフォーム工事の参考価格(目安)

リフォーム工事費用として一番高くつくのは浄化槽工事、次に下水道工事、一番安くつくのは簡易水洗工事となります。

また、それぞれの維持管理費用をまとめますと下表の通りです。

まとめ:ぼっとん便所からのリフォーム後の維持費

ぼっとん便所からの各種リフォーム工事 維持・管理費用
簡易水洗にした場合 4,000円/月
浄化槽を設置した場合 4,917円/月
下水道に接続した場合 3,287円/月

Δ維持・管理費用(モデル:5人家族の場合)

維持管理費用として一番高くつくのは浄化槽、次に簡易水洗、一番安くつくのは下水道となります。

リフォーム工事費用と維持管理費用とを比較して鑑みますと、下水道が整備されている地域では、ぼっとん便所を下水道に接続するリフォーム工事を行った方が一番良いと考えられます。

下水道が整備されていない地域では、簡易水洗にした方がリフォーム工事費用・維持管理費用共に安くつきます。

ただし、簡易水洗は汲み取り式であるため、入居者の目線に立てば敬遠される可能性があります。

将来に亘って資産価値の維持を図るには、工事費用がかかっても浄化槽を採用した方が得策になる可能性は高いといえます。

出所
※1 「便槽容量の算定について」 Daiwa Kasei
www.daiwakasei.co.jp/products/toiletTank/

※2 「し尿収集(一般住宅)と各種手数料」 東京都八王子市
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/life/002/003/003/p006815.html

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