【区分ワンルームマンションの管理費と修繕積立金】利回りを下げる仕組みを解説

区分マンションを購入する場合に、表面利回りや実質利回りという言葉を営業マンからよく聞かれると思います。

実際のところ、それが重要なのかどうかよくわからない方もおられるのではないでしょうか?

しかし、その違いを知るだけで営業マンの営業トークのからくり(罠)を見分けることができます。

ここでは管理費修繕積立金について詳しく解説します。

管理費・修繕積立金の目安を知ることにより、表面利回りよりも実質利回りやROIに関心がいき、失敗しない投資をすることができます。

目次

管理費と修繕積立金で利回りは下がるという罠

区分マンション購入時に、住宅用として購入する場合には住宅ローン返済額に、投資用として購入する場合には不動産投資ローン返済額に目が行きがちになります。

確かに毎月の出費の中でローン返済額の割合が一番大きくなりますから無理はありません。

しかし次に大きな割合を占めるのが、管理費修繕積立金になり、意外と見落としがちになります。

特に投資用として区分マンションを購入する場合、注意しないといけない点は、営業マンは表面利回りしか説明をしない場合が多々見受けられます

表面利回りには、管理費・修繕積立金・ローン返済額は一切含まれていない利回りとなります。

逆に表面利回りしか知らないと、営業マンに簡単に騙されることになり、後悔する羽目になります。

表面利回りの目安として5%以下であると、フルローンで購入した場合には、キャッシュフロー(手残り額)は大半マイナスになります。

しかし営業マンは絶対にその様には説明しません。

「表面利回りが5%も出ますから銀行に預金するよりもはるかに良いです」と言ってきます。実はこの段階で、営業マンとしては失格です。

しかし素人には見抜けないため、購入する羽目になります。

家賃収入に対する管理費・修繕積立金の割合

投資用に区分マンションを購入した場合の家賃収入に対するキャッシュフロー、必要経費、空室率、ローン返済額の割合を下図に示します。

また必要経費(管理費・修繕積立金・固定資産税など)の内訳も表します。

ワンルームマンションの家賃収入に占める必要経費は、修繕積立金、管理費、固定資産税・都市計画税の3つ。それぞれの家賃収入に占める割合は、修繕積立金8%、管理費12%、固定資産税・都市計画税5%となる。

出費の中で一番大きな割合を占めるのがローン返済額になり、その割合は50%以上を占めます。

次に大きな割合を占めるのが必要経費(管理費・修繕積立金・固定資産税など)になり、その割合は25%前後となります。

空室率を10%以内に抑えると、キャッシュフロー(手残り額)は15%以上になります。

必ずしもこの通りになりませんが、目安として見ていただけますと幸いです。

ここでローン返済額の割合(ローン返済比率)ですが、上図では約50%と表記しています。

ローン返済比率が50%以内であると、資金計画は安全圏内にあるといえます。

しかしローン返済比率を50%以内に保つには、自己資金(頭金)の投入額を(購入時諸経費+購入価格の30%以上)にする必要があります。

営業マンの営業トークの罠(からくり)

上記でも説明しましたが、営業マンは表面利回りだけで説明しようとします。

表面利回りには必要経費やローン返済額は含まれません。

要するに表面利回りだけで説明することは、家賃収入が全てキャッシュフロー(手残り額)になるという前提で説明していることになります。

これが営業トークの落とし穴(罠)になります。

実際には必要経費・ローン返済額の出費が伴いますので、キャッシュフローは家賃収入の約15%となります。

しかしキャッシュフロー15%も自己資金(頭金)の投入額を購入時諸経費+購入価格の30%以上の金額にして成立します。

フルローンで購入しますと、ローン返済比率は80%以上に達し、キャッシュフローはマイナスとなります。

管理費の詳しい解説

管理費は管理組合の運営や共用部分の日常のメンテナンスに要する費用です。

管理費の目安について項目別に詳しく解説します。

管理費とは?

管理費は、共用部分(廊下・階段・エントランス・エレベーターなど)の設備使用、清掃、点検、管理会社への業務報酬などに要する費用です。

大型マンション(総戸数100戸以上)になりますと、エントランスにコンシェルジュ(入居者支援サービス)を配置する物件もあります。

その分、人件費がかかり管理費は高くなります。

管理費の内訳は下表の通りです。

管理会社への業務委託費:管理員・コンシェルジュの人件費など
共用部分設備の維持管理費・光熱費・保守点検費
防犯システム費用:

エントランス、エレベーター、駐車場、駐輪場などの防犯カメラ・オートロックなど

共用部分の火災・損害保険
清掃費・ゴミ処理費・消毒費
管理組合の運営費:備品・通信費などの事務費用など
日常の軽微な修繕費

管理費の目安(※1)

管理費の相場について、完成年次別・総戸数別・形態別・地域別・都市県別に国土交通省が集計したデータがありますので下記にします。(集計データはファミリーマンションとワンルームマンションとを合わせたものです。)

マンション完成年次別の平均管理費の推移

マンション完成年次別の管理費の推移は、下表の通りです。

管理費の中には、駐車場使用料・専用庭使用料・ルーフベランダ使用料などが含まれます。それらを使用しない場合は、管理費はその分下がります。

 

マンション完成年次 マンション平均管理費
~昭和59年(1984年) 15,481円・月/戸
~平成元年(1989年) 14,346円・月/戸
~平成6年(1994年) 14,997円・月/戸
~平成11年(1999年) 16,862円・月/戸
~平成16年(2004年) 17,318円・月/戸
~平成21年(2009年) 18,327円・月/戸
~平成26年(2014年) 18,138円・月/戸
平成27年(2015年)以降 19,897円・月/戸

Δマンション完成年次別の平均管理費の推移(出所:国土交通省住宅局) ※1

平均管理費は年々上昇していることがわかります。

要因としては、管理人・コンシェルジュなどの人件費の増加や水道光熱費、火災・損害保険料、日常修繕費用などの増加が考えられます。

月/戸当たりの総額の平均管理費は、15,956円となります。

マンション総戸数別の平均管理費の相違

マンション総戸数別の平均管理費の相違は、下表の通りです。

マンション総戸数 マンション平均管理費
20戸以下 19,237円・月/戸
21戸~30戸 16,997円・月/戸
31戸~50戸 15,049円・月/戸
51戸~75戸 15,346円・月/戸
76戸~100戸 16,455円・月/戸
101戸~150戸 15,069円・月/戸
151戸~200戸 15,951円・月/戸
201戸~300戸 16,365円・月/戸
301戸~500戸 17,703円・月/戸
501戸以上 15,224円・月/戸

Δマンション総戸数別の平均管理費の相違(出所:国土交通省住宅局) ※1

総戸数が少ないマンションよりも多いマンションの方が、スケールメリットにより平均管理費が安くなる傾向にあります。

例えばエレベーター1台当たりの使用する住戸数の多い方が、エレベーターの維持管理費は安くなります。

また総戸数301戸~500戸のマンション管理費が17,703円・月/戸と高くなっていますが、タワーマンションなどが含まれていると想定されます。

タワーマンションになると、エントランスにコンシェルジュなどの人員配置や機械式駐車場の割合が高く、その分平均管理費が高くなります

マンション形態別の平均管理費の相違

マンション形態別の平均管理費の相違は、下表の通りです。

 

マンション形態別 マンション平均管理費
単棟型 3階建以下 14,965円・月/戸
4階~5階建 16,892円・月/戸
6~10階建 15,307円・月/戸
11階~19階 16,155円・月/戸
20階建以上 25,069円・月/戸
平均 16,213円・月/戸
団地型 2棟~3棟 15,128円・月/戸
4棟~5棟 15,937円・月/戸
6棟~10棟 12,582円・月/戸
11棟~20棟 12,335円・月/戸
21棟~50棟 8,845円・月/戸
51棟以上 31,438円・月/戸
平均 14,660円・月/戸

Δマンション形態別の平均管理費の相違(出所:国土交通省住宅局) ※1

単棟型では20階以上のタワーマンションの平均管理費が高くなります。

要因は上記理由の他に、外壁窓などの清掃時に屋上からゴンドラを吊り下ろしての清掃となるため、維持管理費が高くなるからです。

またエレベーターの維持管理費用も高層化により維持管理費が高くなるため、平均管理費が高騰します。

団地型では棟数が多くなるほど平均管理費は下がります。

51棟以上で、31,438円・月/戸となっていますが、集計データが少数により、平均値が上がっているものと思われます。

地域別の平均管理費の相違

地域別の平均管理費の相違は、下表の通りです。

 

地域別 マンション平均管理費
北海道 15,190円・月/戸
東北 16,550円・月/戸
関東 16,096円・月/戸
北陸・中部 16,947円・月/戸
近畿 16,240円・月/戸
中国・四国 14,590円・月/戸
九州・沖縄 15,057円・月/戸

Δ地域別の平均管理費の相違(出所:国土交通省住宅局) ※1

地域別の平均管理費では、北陸・中部が一番高くなり、次いで東北となります。

大都市圏別の平均管理費の相違

大都市圏別の平均管理費の相違は、下表の通りです。

 

大都市圏 マンション平均管理費
東京圏 16,442円・月/戸
名古屋圏 16,893円・月/戸
京阪神圏 16,848円・月/戸

Δ大都市圏別の平均管理費の相違(出所:国土交通省住宅局) ※1

東京圏の平均管理費が一番低くなっていますが、要因はワンルームマンションの棟数が一番多くなるため、平均管理費を下げていると考えられます。

修繕積立金の詳しい解説

マンションを長期間に亘り、維持・管理するために大規模修繕工事が定期的に必要となり、毎月の修繕積立金の徴収が重要となります。

ここでは、大規模修繕工事の概念・内容・修繕周期や修繕積立金の目安・不足した場合・積立方法などを解説します。

修繕積立金とは

修繕積立金は、大規模修繕工事(屋根の防水工事、外壁の修繕補修工事、給排水設備取替工事など)に必要な工事費用の原資です。

マンションを長期間に亘り、良好で安心・安全な状態に保つために必要な資金源となります。

大規模修繕工事

大規模修繕工事は、マンション全体やマンションの複数個所において実施する大規模な計画修繕工事です。

マンション分譲開発会社が計画・作成した長期修繕計画に基づき実施されます。

大規模修繕工事のサイクルは通常12年~15年周期で実施されます。マンション管理組合が管理会社を通して工事会社に大規模修繕工事を発注します。

その工事費用を賄うために、マンション所有者が管理組合へ毎月「修繕積立金」として積立をします。「修繕積立金」の積立方法は、数年ごとに増額していく「段階増額積立方式」を採用しているマンションが多くなります。

長期修繕計画通りに修繕積立金を積立てることができると問題なく予定通りに大規模修繕工事を行うことができます。

しかし滞納者が多くなると、長期修繕計画通りに修繕積立金を積立てることができず資金不足に陥ります。

その場合、マンション所有者から別途一時金を集金するか、管理組合が金融機関から融資を受けて資金不足を補うことになります。

大規模修繕工事の概念

大規模修繕工事には、修繕工事・改良工事・改修工事の3種類の考え方があり、その内容を下表にまとめます。

 

大規模修繕工事の種類 工事の概念
修繕工事 マンション各部の機能・性能を新築時の状態に回復・維持を図る工事です。
改良工事

(グレードアップ)

マンション各部の機能・性能を新築時の状態よりもグレードアップする工事です。マンションを構成する建材・設備・器具を新規格の製品に取り換えたり、新しい機能・性能を不可することもあります。
改修工事 修繕工事や改良工事など、社会や時代の変化に伴い進歩する住環境に合わせて、新築時の状態よりもマンションの機能・性能をより高いものに改善する工事です。

Δ大規模修繕工事の種類

「リフォーム」が「修繕工事」に該当し、「リノベーション」が「改良工事」に該当します。さらに「リフォーム+リノベーション」が改修工事に該当します。

補修や修繕は劣化した価値の回復。回収は新たな価値の向上を指す。

Δ大規模修繕工事の概念と周期(出所:国土交通省住宅局) ※2

改修工事を定期的に実施することにより、マンションの老朽化・陳腐化の抑制に繋がります。

大規模修繕工事において修繕工事だけになると、新築時の状態を維持するだけとなり、建築後十数年経過したマンションは相対的に価値が下がります。

改良工事(グレードアップ)を含んだ改修工事を行うことにより、マンション価値を時間の経過とともに相対的に価値を持続させることが大切です。

大規模修繕工事の内容

大規模修繕工事の項目として、建築工事・設備工事(機械設備工事・電気設備工事)・外構・土木工事があります。

その内容を下表にまとめます。

 

大項目 中項目 工事内容
建築工事 屋根防水工事 屋根、階段出入口部分の庇の劣化・損傷・漏水に対する屋根スラブの躯体改修や屋根防水層の修繕・改修工事です。
床部改修工事 共用廊下、階段、ベランダの床部の防水工事です。
外壁改修工事 外壁、共用廊下・階段・ベランダの壁・手摺壁、庇・ベランダ天井面の吹付塗装部の再塗装、タイル張りの洗浄・劣化・損傷個所の修繕工事です。
鉄・アルミ部

塗装工事

共用廊下・階段・ベランダ・屋上・自転車置場などの鉄部やアルミ・ステンレス部の塗装工事です。
設備工事 給水設備改修工事 屋内・屋外共用給水管や専用部分(住戸内)専用給水管の更生・取替工事、給水施設(受水槽)のオーバーホール・劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。
排水設備改修工事 屋内・屋外雑排水設備、汚水設備、雨水排水設備、屋外桝管路の劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。
ガス設備改修工事 ガス管(屋内・屋外共用、住戸内専有)やメーターの劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。
空調設備改修工事 空調設備の劣化・損傷個所の清掃・修繕・取替工事です。
換気設備改修工事 換気口・換気扇・ダクト類の清掃・修繕・取替工事です。
消火設備改修工事 連結送水管設備、屋内消火栓設備の劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。
エレベーター設備

改修工事

エレベーターのモーター、ロープ、巻上げ機、カゴ、扉,制御盤などの劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。
機械式駐車場

改修工事

機械式駐車場の制御盤、駐車装置、検知装置、操作盤、昇降装置、安全装置などの劣化・損傷個所の修繕・取替工事です。

Δ大規模修繕工事の内容

大規模修繕工事の周期(修繕周期) ※3

修繕周期は、マンションの建物・設備の損傷個所・性能・機能を稼働上・運営上において問題がない程度まで修繕が不可能になるまでの期間です。

建物・設備の劣化・損傷状況に基づき、修繕周期を修繕工事項目ごとに設定します。

建築工事の修繕周期

国土交通省が規定する建築工事の修繕工事項目ごとの修繕周期は、下表の通りです。

 

建築工事 修繕工事項目 工事区分 修繕周期
屋根防水工事 屋上防水(保護) 補修 12年
修繕 24年
屋上防水(露出) 補修 12年
撤去・新設 24年
傾斜屋根 補修 12年
撤去・葺替 24年
庇・笠木等防水 修繕 12年
床部改修工事 ベランダ床防水 修繕 12年
廊下・階段等防水 修繕 12年
外壁改修工事 コンクリート補修 補修 12年
外壁塗装 塗替 12年
除去・塗装 36年
軒天塗装 塗替 12年
除去・塗装 36年
タイル張補修 補修 12年
シーリング 打替 12年
鉄・アルミ部塗装工事 鉄部塗装(雨掛かり部分) 塗替 4年
鉄部塗装(非雨がかり部分) 塗替 6年
非鉄部塗装 清掃・塗装 12年

Δ建築工事の修繕周期(出所:国土交通省住宅局) ※3

設備工事の修繕周期

国土交通省が定める設備工事の修繕工事項目ごとの修繕周期は、下表の通りです。

 

設備工事 修繕工事項目 工事区分 修繕周期
給水設備改修工事 給水管 更生 15年
取替 30年
貯水槽 取替 25年
給水ポンプ 補修 8年
取替 16年
排水設備改修工事 排水管 更生 15年
取替 30年
排水ポンポ 補修 8年
取替 16年
ガス設備改修工事 ガス管 取替 30年
空調設備改修工事 空調設備 取替 15年
換気設備改修工事 換気設備 取替 15年
消火設備改修工事 屋内消火栓設備 取替 25年
自動火災報知機 取替 20年
連結送水管設備 取替 25年
エレベーター

設備改修工事

昇降機 補修 15年
取替 30年
機械式駐車場

改修工事

自走式駐車場 補修 10年
取替 30年
機械式駐車場 補修 5年
取替 20年

Δ設備工事の修繕周期(出所:国土交通省住宅局) ※3

建物・設備の使用状況(使用頻度・維持管理)により、修繕周期は前後します。

修繕工事は早く実施すると過剰工事となり、遅く実施すると建物・設備の劣化・損傷が進行し、修繕工事費が増加します。

修繕工事を集約して同じタイムングで実施することにより、共用仮設費用の重複を避けることができ、無駄な費用を省くことができます。

その反面修繕工事を集約しすぎると、大規模修繕工事費用が不足する事態に陥ります。修繕積立金の積立額と大規模修繕工事の見積とを比較・調整しながらの実施となります。

修繕積立金の目安 ※4

国土交通省は新築マンション購入者向けに「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表しました。

このガイドラインは、修繕積立金の詳しい内容を示したものです。

専有面積当たりの修繕積立金の単価

区分マンションの修繕積立金は、下記の計算式で算出されます。

区分マンションの修繕積立金

P : 修繕積立金の目安額(円)
A : 専有床面積当たりの修繕積立金単価(円/㎡) *下表参照
B : 専有床面積(㎡)
C : 機械式駐車場がある場合の加算額(円)

 

P = A × B (+ C)

 

 

階数/建築延床面積 修繕積立金単価 調査事例の3分の2が包含される幅
【15階未満】 5,000㎡未満 218円/㎡・月 165円~250円/㎡・月
5,000㎡以上~10,000㎡未満 202円/㎡・月 140円~265円/㎡・月
10,000㎡以上 178円/㎡・月 135円~220円/㎡・月
【20階以上】 206円/㎡・月 170円~245円/㎡・月

Δ専有床面積当たりの修繕積立金単価(A)(出所:国土交通省住宅局) ※4

【事例1】10階建て、建築延床面積:9,500㎡のマンションにおいて、専有床面積70㎡の区分マンションの修繕積立金の目安は?
上表より修繕積立金単価は、202円/㎡・月となるので、修繕積立金 = 202円/㎡・月 × 70㎡ = 14,140円/月

となります。

機械式駐車場がある場合の加算額 ※3

機械式駐車場がある場合の加算額は、下記の計算式で算出されます。

C = D × E × F

C : 機械式駐車場がある場合の加算額(円)
D : 機械式駐車場の1台当たりの修繕工事費(円/台) *下表参照
E : 台数(台)
F : 購入区分マンションの負担割合(専有床面積の割合)

 

機械式駐車場の種類 機械式駐車場の修繕工事費(1台当たりの月額)
2段(ピット1段)昇降式 7,085円/台・月
3段(ピット2段)昇降式 6,040円/台・月
3段(ピット1段)昇降横行式 8,450円/台・月
4段(ピット2段)昇降横行式 14,165円/台・月

Δ機械式駐車場1台当たりの修繕工事費(D)(出所:国土交通省住宅局) ※4

【事例2】【事例1】と同じマンションで、3段(ピット2段)昇降式の機械式駐車場が100台分あります。

購入区分マンションの専有面積は70㎡です。機械式駐車場の加算額は?

機械式駐車場加算額 = 6,040円/台・月 × 100台 × 70㎡/9,500㎡ = 4,450円/月

【事例1】と【事例2】とを合わせて、機械式駐車場加算額を加味した修繕積立金は?

 

修繕積立金 = 14,140円/月 + 4,450円/月 = 18,590円/月

となります。

修繕積立金が少ないと・・・

現状の修繕積立金の積立額が、長期修繕計画による修繕積立金の積立額と比較して、不足しているマンションは全体の34.8%になります。

不明のマンションの割合が31.4%になるため、実質的には不足しているマンションの割合はさらに増加します。 (※5)

 

大規模修繕費が不足しているマンションは、34.8%。不明の31.4%の内訳も、多分足らないマンションが多い

修繕積立金が長期修繕計画による予定額と比較して少ないと、下記の対処が考えられます。

多額の一時金が必要

大規模修繕工事は不確定要素が多いため、予想外の工事が生じて必要資材数量の増加となる場合もあります。

また物価上昇による資材費用の増加や災害・事故などによる緊急を要する工事費用の捻出のために、多額の一時金を徴収せざるを得ないこともあります。

しかし区分所有者の同意を必要最小限度数、得られない場合もあり、大規模修繕工事にかかれない可能性もあります。

管理組合・管理会社が事前に修繕工事内容・時期・工事費用などの説明資料を作成・提示し、区分所有者の同意を得られるようにすることが必要となります。

また区分所有者も管理組合・管理会社に任せきりにするのではなく、積極的に関与することが大切です。

共用部分の一部しか修繕工事ができない

多くのマンションで、分譲開始後12年~15年経過した時点で第1回大規模修繕工事を迎えます。

共用部分は、共用廊下・階段、エントランス、エレベーター、ベランダ、屋根、階段など多岐に亘るため、高額な工事費用となります。

修繕積立金の積立方法として、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」などがあります。

2010年より後に完成したマンションの68%は、「段階増額積立方式」を採用しています。

その要因は、分譲会社がマンション分譲価格の高騰により、購入者の負担を軽減するための方式です。

しかし期間経過ごとに修繕積立金を増額するには、購入時にわかっていることとはいえ、管理組合総会での区分所有者による議決が必要になります。

増額に反対する区分所有者の数が多ければ、議決を得られずにこれまで通りの修繕積立金額での積立になり、計画はそこから狂い始めます。

修繕積立金の積立額が計画よりも少額となるため、共用部分の一部しか修繕工事ができず、残りは放置した状態となります。

管理組合が金融機関から借入

大規模修繕工事に必要な修繕積立金の積立額が不足している場合、管理組合が不足分を金融機関からリフォームローンなどを組んで大規模修繕工事の費用を賄うこともあります。

上記の多額の一時金よりは検討・判断し易くなります。

しかし今までの修繕積立金ローン返済額が加算されるため、管理組合総会での区分所有者による採択がなされない可能性もあります。また採択されたとしても、加算されるローン返済額が負担となり、区分所有者の家計状態によっては払えない場合も出てきます。

金融機関ローンの中には、管理組合が融資条件を満たしていると、150万円×総住戸数を限度として大規模修繕工事の総額の80%まで無担保で融資を受けることができます。

修繕積立金の積立方式

修繕積立金の積立方式を確認・把握しておくことは、住宅ローン返済と合わせて数年後・十数年後の家計に影響を及ぼしますので重要なことです。

将来において競売にかけられたり、任意売却せざるを得なくならないようにするためにも、修繕積立金の積立方式の内容を確認・把握することは大切です。

積立方式の違いを下表にまとめます。

 

積立方式 内  容
均等積立方式 長期修繕計画による修繕工事費の総額を通常30年に亘り、均等に積立てる方式です。途中で増額することなく、安定して修繕積立金を確保できる点がメリットです。
段階増額積立方式 マンション購入当初の修繕積立金を低く抑え、修繕積立金を段階的に増額する方式です。この方式を採用する分譲会社が多くなります。初期積立費用が抑えられますので、購入し易くなるのがメリットです。ただし後日増額がスムースになされずに長期修繕計画通りのメンテナンスができないデメリットもあります。
修繕積立基金方式 マンション購入時にまとまった金額を預ける方式です。最近ではこの方式を採用する分譲会社が増える傾向にあります。

Δ修繕積立金の積立方式

段階増額積立方式を採用するマンションの割合が増加している

Δ修繕積立金の積立方式の割合(出所:国土交通省住宅局) ※5

まとめ

管理費と修繕積立金の詳しい説明をしましたが、購入前に必ず確認をしておく必要があります。

特に修繕積立金に関しては、ある一定期間が経過すると増額していく方式が増えていますので、将来の家計の状態を圧迫しないことの確認が重要です。

また購入の際には、表面利回りだけで決して判断をしてはなりません。

必要経費を加味した実質利回りや、必要経費・ローン返済額を加味したROIにて投資判断することが、失敗をしない区分マンション投資にとって不可欠となります。

5.出所
※1 「平成30年度マンション総合調査結果:管理組合向け調査の結果」
(平成31年4月26日公表) 国土交通省住宅局
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html
「管理組合向け調査の結果:P175」
http://www.mlit.go.jp/common/001287645.pdf

※2 「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」 平成22年7月改討
国土交通省住宅局
http://www.m-saisei.info/horei/enkatsuka/manual/kaisyu.pdf

※3 「第3編 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」 国土交通省住宅局 http://www.mlit.go.jp/common/001172737.pdf

※4 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 平成23年4月 国土交通省住宅局
http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf
※5 「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」
国土交通省住宅局
http://www.mlit.go.jp/common/001287570.pdf

 

 

 

 

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