RC造(鉄筋コンクリート造)新築は不動産投資の最高到達点って感じですよね。
特に都内のRC新築は、耐用年数の長さから、売却時も次に買う人が長期融資を引けるため高値で売ることができ、出口戦略が強すぎて売却益がおいしいので、不動産投資家の行き着く先って投資法です。
いつかやってみたい、RC新築の特徴、建築費、減価償却、期待できる利回り、おすすめのエリアを解説します。
RC造物件の特徴とメリット・デメリット
RC造は、主要構造部である柱や梁、床、壁が鉄筋とコンクリートにより構成された構造です。
通常、鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたものです。
コンクリートは、セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)、混和材料から構成されます。
コンクリートの中に占める割合を体積で比較すると、最も多く入っているのが粗骨材(砂利)です。
次いで、細骨材(砂)、水、セメント、混和材料の順になります。
RC造の特徴は、2種類の建材である鉄筋とコンクリートの組合せで建物に必要な強度を出している点です。鉄筋とコンクリートの性質を下表にまとめます。
建 材 | 線膨張係数(1/℃) | 性 質 |
---|---|---|
鉄 筋 | 1.0×10-5 | 引張力に強く、圧縮力に弱い。熱に弱く、錆びやすい |
コンクリート | 1.0×10-5 | 引張力に弱く、圧縮力に強い。熱に強く、錆びない |
鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートのそれぞれの長所・短所を補い合う建材で、様々なメリットがあります。
熱に弱い鉄筋を熱に強いコンクリートで覆い、熱から鉄筋を守ります。
引張力に弱いコンクリートを引張力に強い鉄筋で補います。
逆に圧縮力に弱い鉄筋を圧縮力の強いコンクリートが補います。
さらに鉄筋とコンクリートが一緒に使用されている最大の理由は、鉄筋とコンクリートの線膨張係数が同じであることです。
そのため、鉄筋コンクリートの温度が上昇し、鉄筋とコンクリートがそれぞれ膨張する際、同じ割合で膨張します。
よってずれが生じないため、構造的強度は損なわれなくて済みます。
次にRC造のメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
耐震性に優れる | 経済性は落ちる(坪単価は一番高い) |
耐火性に優れる | 通気性は落ちる |
防音性・遮音性に優れる | 大幅な改装ができない |
耐水性に優れる | 建築工期が長い |
メリット1:耐震性に優れる
圧縮力と引張力の両方を兼ね備えた構造であるため、耐久性は高くなります。
また、木造軸組み工法は、柱と梁で強度を保ち、鉄骨造のラーメン構造も柱と梁で強度を保ちます。
RC造は壁・床にも耐力を持たせるため耐力壁を使い、そのため耐震性に優れます。
他にも地震に対して様々な処置が施されていますが、それらを下表にまとめます。
耐震性 | 建物の耐久性により、地震の揺れを直接受け止めます。 |
---|---|
免震性 | 建物の下に積層ゴムを入れて、地震の揺れを建物に伝えない様にします。 |
制震性 | 建物に伝わった地震の揺れをダンパーによって吸収し、揺れを小さくします。 |
メリット2:耐火性に優れる
RC造のコンクリートは熱に強い建材で、耐火性に優れます。
鉄筋は燃えないんですが、熱で変形しちゃいますが、コンクリートだから当然燃えないし変形しないんで強いんですよね。
メリット3:防音性・遮音性に優れる
遮音性は重い材料を使用するほど高くなります。
鉄筋コンクリートは重量があるため、高い遮音性を発揮します。
この辺は鉄骨と全く違って、うるさくしても良いのでファミリー向けなのですよね。
特に低温を遮断するため、住戸内にシアタールームを造り、サラウンドスピーカー(*3)を設置しても大丈夫です。
*3 サラウンド:一般的に5つ以上のスピーカーを使用して、聞き手の周りに設置し、前からも後ろからも音に囲まれるような音場のこと。
メリット4:耐水性に優れる
台風の巨大化による豪雨・洪水・高潮などの浸水被害が増加し、建物損傷も増加しています。
RC造は柱・梁・壁・床いずれも強度を持つ構造体であるため、耐水性にも優れます。
また重量があるため、木造のように、浸水により流される心配はありません。
デメリット1:経済性は落ちる
木造や鉄骨造と比較すると、建築坪単価は一番高い構造となります。
木造 < 軽量鉄骨造 < 重量鉄骨造 < RC造
また、解体費用も一番高くなります。
そのため、利回りも出ません。
木造新築が7%のエリアだとしたら、RC造新築なら5.5%~6%位の利回りしか出ないでしょう。
また、固定資産税が高く、その観点からも収益性が落ちます。
利回りが低く、税金も高いっていうの収益性が悪い理由ですね。
デメリット2:通気性は落ちる
RCは断熱性に優れるのですが、逆に言えば気密性が高く、換気がしにくくなります。
冬に長時間の暖房をすると、窓の外側と内側の温度差により結露が発生しやすくなります。
水滴が付いたままの状態を放置しますとカビが発生して室内環境が悪化します。
デメリット3:大幅な改装ができない
木造軸組工法や鉄骨造のラーメン構造は柱と梁で建物を支えているため、建築後でも壁を取り払っての大幅な改装ができます。
RC造は、柱・梁・壁・床で建物を支えているため、耐力壁になっている場合には、壁を取り払うことができません。
したがって住戸が耐力壁で仕切られている場合は、2住戸を1住戸に改装することはできません。
また住戸内での間取り変更(リノベーション)の自由度も低いです。
部屋内に耐力壁があれば、それは取り壊せませんし、頑丈な梁が通っていて自由にリノベーションできないケースが多いです。
デメリット4:建築工期が長い
RC造は現場施工になる割合が大半となります。
特にコンクリートを型枠内に流し込む作業は、雨天時にはできませんので、工程は天候に左右されます。
おおよその工事期間は、階数+3か月が目途となります。
3階建ならば6か月、4階建ならば7か月、5階建ならば8か月といった工期になります。
RC造の建築費
国土交通省が発行する「建築着工統計調査報告」(平成30年度分)において、住宅のRC造坪単価の推移は下表の通りです。
(※1)木造・鉄骨造と同様に年々坪単価が上昇しており、2018年時点では80.2万円/坪です。
年 | RC造 |
---|---|
2011年 | 59.9万円 |
2012年 | 59.7万円 |
2013年 | 62.3万円 |
2014年 | 68.4万円 |
2015年 | 75.4万円 |
2016年 | 76.7万円 |
2017年 | 80.6万円 |
2018年 | 80.2万円 |
RC造の減価償却
RC造の法定耐用年数と償却率は、下表の通りです。(※2)
減価償却資産 | 法定耐用年数 | 定額法償却率 |
---|---|---|
RC造 | 47年 | 0.022 |
【事例】
5,000万円のRC造のマンションを建築した場合、年間の減価償却費(概算)を計算します。
減価償却費 = 5,000万円 × 0.022 = 110万円/年
建築価格が同じであれば、木造・鉄骨造と比較して、RC造は年間経費として計上できる減価償却費は小さくなることがわかります。
RC造の期待できる利回り
RC造の期待できる利回りを、筆者の経験と大家仲間との情報交換に基づいてあえて記すと、
大都市中心部で表面利回り:5%前後
地方都市で表面利回り:8%前後となります。
必ずしもこの通りにはいきませんが、一つの目安として見ていただけると幸いです。
ただ、この通りだともちろん儲からないです。
出来れば、大都市圏で7%近くの利回りを出せるような建築プランを考えたいものです。
【事例】
RC造マンションを事例として、表面利回り・実質利回り・ROIを計算してみます。条件設定は下記の通りです。
構造・規模:RC造3階建18戸、延床面積:220坪、間取り:1K・25㎡
建築価格:1億7,600万円、建築時諸経費:1,200万円、総投資額:1億8,800万円
家賃:7万円/戸・月、満室賃料:満室賃料:1,512万円、必要経費:302万円
自己資金:3,800万円、自己資金率:20%
金融機関融資額:1億5,000万円、金利3%、融資期間35年、年間ローン返済額:693万円
表面利回り = 満室賃料 ÷ 建築価格 × 100
= 1,512万円 ÷ 1億7,600万円 × 100 = 8.6%
実質利回り =(満室賃料―必要経費)÷(建築価格+建築時諸経費)× 100
=(1,512万円―302万円)÷(1億7,600万円+1,200万円)× 100 = 6.4%
ROI =(満室賃料―必要経費―ローン返済額)÷(建築価格+建築時諸経費)× 100
=(1,512万円―302万円―693万円)÷(1億7,600万円+1,200万円)×100 = 2.8%
このマンションの投資判断は、自己資金率20%でROIが2.8%なので、投資可能です。
おすすめのエリア、土地の特徴
階数は、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)を採用すれば、超高層マンション(階数20階建以上)も可能です。
一般的な個人投資家が建てるRC新築は4階から5階くらいのものが多いでしょう。
低層だと収益性が低く、高層過ぎると容積率の高い土地が必要になり、用地確保が難しくなり総工費も大きくなります。
用途地域については、商業系・工業系(工業専用地域を除く)のいずれにも不動産投資物件に適します。
一種低層などの閑静な住宅地などだと容積率が低く、RC造のメリットである「上に高くする」が不可能なので、あまり向いていないと言えるでしょう。
個人投資家だと準工業地域に建てるケースが多いですね。
また家賃設定が高く設定できる地域では、入居者が防音性・遮音性・耐火性・耐震性などを高い水準で要求します。
RC造は、それらの性能を兼ね備えた構造となりますので、高額家賃エリアに適するといえます。
出所
※1 「建築着工統計調査報告」(平成30年度分) 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_000830.html
※2 「耐用年数(建物/建物付属設備)」 国税庁
https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html
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